vol.13   いつも2人で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近いつも2人で」を見てるとすごいなあ…って思うんですよ。
昔はこの不思議な時間軸の構成の部分をすごい!って思ってた。
むろんそこもすごいんですよね。
不幸をなーんにも知らない2人が立っている横を
離婚だ!なんてもめてる2人が通りすぎていく。
橋本治氏が言うように、こんな人生もある、あんな人生もある、
それは同じ人の人生かもしれない、っていうのを表していますよね。
で、僕は1〜3回目の旅の部分が好きで、5・6回目の旅は暗くてやだなとか思ってた。
でも自分も年をとって5回目や6回目の旅の意味も少しずつわかってきた


 

1回目はそれまでオードリーが演じてきた役そのものですよね、
いろいろありましたが、結局ハッピーで結ばれました、みたいな。
もちろんここもすごいんです。オードリーがそれまでになく生き生きしてる!
大口開けて笑うし、ほんとに素敵!それまでにない
生きてるオードリーです!
もちろん3回目の旅もそうです。2人だけでスタートした旅は途中で
モーリスというパトロンと出会って、ちょっとぎくしゃくし始める。
でもまだまだハッピー!ほんとに2人は楽しそうに旅を続ける。
オードリーもびっくりして目をみはるくらいの自然でかわいい表情をする!

ぼーっとしてたら見落としてしまうシーンね!
4回目はマーク一人旅だからあんまり関係ないけど、
じゃあ5回目は?6回目の現在は?
ここらへんが最近よくわかるようになってきた!これって年の功ですね。
単に
暗いなんて思ってたこの2回の旅がやっと理解できるようになってきた。

そしてその違いも…。


オードリーはこの「いつも2人で」で今まで演じたことのない役をやった。

具体的に言うと、今まで演じてきた
それで2人は結ばれました、めでたしめでたしの後の2人ですよね。
たとえば、2回目の友人夫婦とその子供との旅は
すこーし暗くなりかけても、その原因はその夫婦と子供だった。
マークとジョアンナは幸せだった。要するに敵は外部の人間だった。
でも5回目となると、敵は変ってる!その敵はお互いなんですよね。
お互い相手が悪いと思ってる。だからうまくいかないんだって。で、お互い浮気しちゃう。
マークは4回目の旅で、ジョアンナは5回目の旅で。
ジョアンナは5回目の旅であんまり笑わない。
デビッドに媚びた笑いを見せるときと、
そのデビッドと話をしていて車の中で振り向きながら過去も振り向くときだけ。
過去の楽しい思い出を振り返ったとき、
自分の楽しかった時を思い出して本当に笑う。でも現実に戻った時、また硬い顔に戻る。
5回目の旅の最後、マークとジョアンナは和解するんですよね。

“忘れましょう”“忘れるよ”って。
でも6回目の旅、要するに現在はまた仲がぎくしゃくしてる。ここが昔はわかんなかった。
なんで?和解したはずじゃあ…”みたいな。

でもね、これがやっとわかるようになってきた。5回目の和解はね、はっきり言うと
“臭いものにはフタをしろ!”だったんですよね。だからうまくいかない。
お互い浮気したのを忘れろったって無理ですよね。
いつまでーもどっかでそのことを引きずってる。
で、顔を合わすとぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ言い合ってる。
“だまって食事をする2人は何?”“夫婦”
とか。過去の自分達が見下していたものに今の自分達がなってしまってる。
現在の敵はもう相手じゃないんですよね。それは自分自身になってる。
自分自身の考えを変えなきゃダメ!みたいな。
人間、長い間生きてると変ってしまう。
外から見ると一緒でもね、やっぱり少しは変るんだよね。
マークとジョアンナはもう12年も夫婦やってる。
絶対元と一緒であるわけがない!
だから5回目の和解は“元どおりやろう!”だったけど、
変ってるのに1回目や3回目の旅のようにいくわけがない。
年も違うし、考え方も生き方も違う。笑いの質だって変っちゃう。
だから自分は、相手は元と一緒でない!って認識した時初めて
本当にもう一度2人は歩き出せるんだよね。

ラストでジョアンナはマークに言いますよね、
“あなたはもう昔の短気で天狗の若僧じゃない。今は短気で天狗の成功者よ!”って。
これ、とっても意味深ですよね。変ったんだよねって認めてる。
たとえ傍から見たらそんなに変ってないように見えたとしてもね。
オードリーに関しての著書をいくつか書いてる吉村英夫氏は「いつも2人で」について
“明るくしようとしてその実とっても暗いものになってしまった”とか、

“明日にでも別れそう”なんて書いてますけど、僕は違うと思うんですよね。
このシーンがあるから、安心してマークとジョアンナの将来を
すがすがしい気持ちで見ていられる。
お互いの今を認識した2人だから、この和解は本物ですよね。もう大丈夫!って

区切りをつけた2人は幸せな気持ちで国境を越える。前に進んでいく。
過去の自分達があって今のお互いもある。その今のお互いを認識した。

全てを受け入れて。なかったことにする、なんてズルはせずにね!
ジョアンナは先にわかってますけど、マークはここで初めてわかりますよね。
パスポートをなくした!ってマークがまた騒ぎますけど、
いつものようにジョアンナがまたさっさと取り出してハンドルに置きますよね。
この辺はもう長年連れ添った2人のあうんの呼吸ですね。
夫婦で積み重ねてきたものもあって、2人にしかわからないこともある。
その上で今のお互いを認識しなきゃだめなわけで

 

、自分も色々あって、先が見えないかな〜なんて思ってるんですよね。
これって5回目の旅そのものですよね。
で、自分自身のパスポートが見つからない気がしてるんですけど、
今の自分を認識しなきゃって思ってるんですよね。
過去ばっかり振り向いてちゃ前に進めない!って。
こんなすごいことを教えてくれて、さらっと言ってのける
「いつも2人で」ってほんとすごいなーって思うんです。
年々意味が深くなる作品なんですよね。僕のベストムービーです!!!
アカデミー賞では脚本賞にノミネートされただけだけど、
サン・セバスチャン映画祭ってのではグランプリ取ってるんです。
日本ではそんなにまだ評価されてないけど、
海外ではオードリーの代表作の1本なんですよね。
また日本でもいつか再評価してほしいなあ

今あなたが見て、この作品を全部が全部わかんなくってもいいんですよ。
たとえば、昔の僕みたいに1〜3回目の旅しかわかんなくてもね。
あなたが今その旅の途中だから!
一所懸命その時間を生きて欲しいんです。マークとジョアンナみたいに。
で、いつかまた見て欲しいんですよね。
そしたらまた見方が変ってくるから

 

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